2018年11月例会
講師:(株)フィックスジャパン長野支店 支店長 宮坂辰雄氏
演題:「日本の財政について」
日時:平成30年11月28日(水)18:00~
場所:やま茶屋
11月例会は、当会会員の(株)フィックスジャパン長野支店長・宮坂辰雄氏にご講演いただきました。宮坂さんは郵便局、外資系保険会社、総合保険代理店での勤務を経た後、同社に入社。将来を見据えた金融商品を提供することで、お客様の価値ある未来づくりに貢献しています。今回の講演では日本が抱える財政問題についてお話しいただきました。
(以下講演内容です)
日本の財政について
日本の財政の現状
現在、日本財政は歳出が歳入(税収)を上回っており、赤字分は国債の発行により補われています。国債残高は増加の一途をたどっており、日本国民が抱える負債は一人当たり約700万円と言われています。平成30年度末の普通国債残高は約833兆円。これは約15年分の税収に相当します。
日本財政が抱える課題
日本財政が抱える課題の一つとして「少子高齢化」が挙げられます。2025年には特に人口が多いと言われている「団塊の世代(1947~49年生まれ)」が後期高齢者に移行し、高齢化率と平均年齢はさらに上昇していきます。この時問題となるのが「社会保障制度」に充てる財源の確保です。
現在、日本の社会保障制度は「高齢者医療・介護給付金」の5割が税金により賄われるなど、税財源に依存しています。税以外からの財源確保ができていないため、国の赤字は増え続けており、その負担は将来を担う世代へと先送りされているのです。
消費税増税について
日本の社会保障制度にかかる費用は原則として「社会保険料」で賄うとされていますが、働く世代に負担が集中してしまう面を持ち合わせています。そこで、あらゆる世代が費用を平等に分かち合うために採択されているのが「消費税」です。
【消費税のメリット】
- 安定した税収が得られる
- 人口構成の変化や景気に左右されにくい
- 特定の世代に負担が集中しない
上記のように、消費税は安定した財源の調達手段であるため、増税が続いているのです。
また、2019年10月施行予定の「消費税率10%への引き上げ」による財源の一部は、
●子どもを育てやすい環境づくりや介護人材の処遇改善を行う【人づくり革命】
●AIなどの新技術を取り入れて企業の生産性向上を目指す【生産性革命】
などといった新たな経済政策実現のための費用として活用される予定です。
海外の財政運営事例
海外ではこれまでどのような経済政策が行われてきたのでしょうか。
失敗例と成功例、それぞれの事例には改革成功へのヒントが隠されています。
【失敗例:ギリシャ】
ユーロ加盟やアテネオリンピック開催により経済が発展。
しかし…
本来好景気時に行う「歳出・歳入改革(歳出を抑え、税収を増やす改革)」に着手しなかったため、リーマンショックや財政統計の不正発覚を皮切りに経済状況が大幅に悪化。
景気悪化による大幅な増税や急激な年金改革などにより、国民の不満は爆発。ストライキが頻発した。
⇒経済の安定期にこそ、財政健全化に向けた取り組みを行うべき。急激な改革は国民からの不満につながります。
【成功例:ドイツ】
国民の高齢化が進み、2000年代前半は税収不足や社会保障支出の増加に悩んでいた。
そこで…
支出を抑えるため、「社会保障・労働市場改革(失業給付支給期間の短縮など)」を着実に推進。
急激な経済政策を行わずコツコツと財政を立て直したため、国民の混乱が起こらなかった。
⇒経済政策を行う際には「改革の目的」を明確にしたうえで、継続的に活動をすることが大切です。
増え続ける国債、少子高齢化の進行―日本の将来に不安を感じる方も多いでしょう。しかし、ただ心配しているだけでは問題の解決になりません。
私たち一人一人が「今からできること」を考え、問題意識を持って行動する。そうすれば未来は価値あるものになるはず―そう語る宮坂さん。言葉の端々からは、日本の「これから」にかける熱い想いが感じられました。
講演の最後には「国が推進する新たな経済政策の中から自社に落とし込めること」についてのディスカッションを行いました。参加者同士が真剣に意見交換をしている姿が印象的でした。
宮坂さん、ならびに(株)フレックスジャパン様のますますのご活躍をお祈りいたします。